『Marvel's Spider-Man』究極の"なりきりゲーム" それはリアルヒーローアクションという新しいジャンル
ゲームしてる最中は間違いなく俺もスパイダーマンだった
ゲームは"ごっこ遊び"だと思っている。
剣と魔法を使ってドラゴンを倒すごっこ。
銃を持ってエイリアンを倒すごっこ。
メカに乗って派手な必殺技を繰り出すごっこ。
そういう意味で『Marvel's Spider-Man』は究極のごっこ遊び。少なくともこれ以上になりきれるゲームはそうそう存在しない。
恐らくこう思えるのも、俺がスパイダーマンが好きだからという感情を持つ以外に他ならない。
このゲームの評価は、いかにスパイダーマンが好きかどうかに左右される。
何故ならスパイダーマンになりきっていたいから、次の目的地まで2キロだろうがファストトラベルも使わずにウェブスイングで地道に移動していくほど。もっと移動していたいから遠回りも平気でする。
ウェブを使ったスイングの加速感とジャンプした時の浮遊感が合わさって移動がとても気持ち良い。移動が苦にならない所か、楽しくすらある。
他のゲームなら探索しながら戦闘しながらが付いてくるが、移動だけでも楽しいというのは稀。
要するに没入感。スパイダーマンになりきれる要素が多い。
次の目的地へ向かう途中で発生する事件。スパイダーマンを呼ぶ声。その中でピーターとしての日常。
これらの要素が次から次へとスピード落とさずにやってくるからスパイダーマンとしての忙しさ、等身大のヒーロー像を最後まで追体験できた。
ビルとビルばかり飛んでいると気付きにくいが、一度街なかに降りると市民からの声援も作り込まれている。一緒に写真を撮る人。手を振る人。反応もさまざまで面白い。
敵をウェブで拘束できること。
これって地味だが、スパイダーマンらしくてなりきりを加速させている。
「ビルから敵を落下させたら死ぬのかな?」なんて考えたが、敵がウェブに絡まってビルに貼っ付くのを見かけた時、スパイダーマン像を大切にしている制作だなと感心した。
だから単に敵をブチのめすだけじゃなく、敵を拘束して警察の到着を待つなんて事が出来るのも面白い。
こういうアクションの選択肢が複数ある遊び心が粋。
2002年に公開したサム・ライミ監督の映画「スパイダーマン」シリーズに始まる、映画シリーズの動きを取り入れてるのもミーハーファンとしては嬉しかったり。
「アメイジング・スパイダーマン」「スパイダーマン:ホームカミング」それぞれのスパイダーマンのアクションをちょっとずつ再現してる。
狭い鉄骨の間を身体を捩らせて通り抜ける所なんて「アメイジング・スパイダーマン」を思い出すし、多数のガジェットを使うサマは「ホームカミング」流。
電車をクモ糸で止めるのはやっぱり最初の映画「スパイダーマン2」だろうか。あとは「アベンジャーズ」の要素もあり、胸踊らせた部分も多い。
プレイしていて「あ、今の一瞬の動き映画にあったな」ってなる感触。スパイダーマンに成れてるなぁってより感じられたり。
忘れてはならないのが前身となった『バットマン:アーカム』シリーズ。
1人のヒーローに徹底的になりきる遊び方を作り出した功績があってこそ、スパイダーマンのような日常生活とヒーローの合間に揺れる親愛なる隣人が誕生した。
移動と戦闘の爽快感が両立、そして制作側の熱意と研究の成果が一つの作品として成立した稀有なシリーズ。言うなればリアルヒーローという新しいジャンルかな。