ゲームライターの独り言『Demon's Souls(デモンズソウル)』
『Demon's Souls』は時代の流行りに
どこまでも逆行した異質なゲームだった
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ゲームライターのシューこと大谷修斗です。PS3の中でも特に好きなタイトルが『Demon's Souls(以下、デモンズ)』。今日はその魅力をつらつら書きたいと思う。
『デモンズ』の発売は2009年。
同時期に発売したゲームには『ベヨネッタ』、『NINJA GAIDEN Σ2』、『アサシンクリードⅡ』などのタイトルがある。これらと比べて『デモンズ』の何が異質なのか。
それらのアクションゲームが「スタイリッシュ」や「ハイスピードアクション」、「爽快感」に重点を置いているのに対し、『デモンズ』は地に足の着いた泥臭い剣戟という、この頃にしては、むしろ遅いくらいのゲームスピードで勝負しにきた所だ。
もちろん『デモンズ』のジャンルはアクションRPGなので、純粋なACTタイトルと比べるとゲームスピードの違いは当然かもしれない。しかし『FFⅩⅢ』、『龍が如く3』、『テイルズ オブ ヴェスペリア』も同年発売なのだが、どれもアクション性のあるタイトルなのが分かると思う。
この頃は……というか、どのゲームも基本的にはキャラの操作感やアクションの爽快感を重視するのが当たり前で、そこに各タイトルごとで面白さを肉付けしていく。
それに対し『デモンズ』はキャラの操作よりもダンジョンの仕掛けや謎解き、いかにプレイヤーが四苦八苦するかに比重を置いている。自キャラよりも周りに力を入れているという意味では、どこまでも真逆なんだ。
だが、これは持論なのだけど。
ゲーム側がプレイヤーキャラの動きを制限しすぎているタイトルは、だいたい面白くない。
極端に言えば、プレイヤーキャラが弱くて敵が強すぎるゲーム。プレイヤーキャラが出来る事が限られてるのに敵は空を飛ぶわ、遠距離攻撃をするわで、あまりに不公平が過ぎると「楽しみたくて遊んでるのにストレスだわ!」の典型。
けれど『デモンズ』は、そこがうまい具合のバランスにおさまってる。
上手く表現出来ないが「死んだあああ!! でも、もうちょっと頑張れば倒せるかも」その連続。自発的にトライアル&エラー、つまり試行錯誤を促す仕組みになっているのが、何よりも凄い。
また拠点となるエリアから5つのダンジョンに向かっていく構造なのもゲーム性とマッチしていて、例えばステージクリア型のゲームなら「コイツ強すぎだろ! どうやって倒すんだよ!」となり得る部分も、『デモンズ』のようなゲーム性なら「コイツ強すぎだろ! てことは、まだここに行くのは早いのかな」と考えを変えられる。
そのバランスを作るのはとても難しい事だったと思う。でも、だからこそ惹かれた。技術の未熟な子供ではなく、そこそこ経験を積んだ大人になってから、そんな試行錯誤の連続のゲームと出逢ったのは久々だったから。
敵をぶっ倒す爽快感ではなく、自分がぶっ倒されるかもしれない緊張感。
戦い甲斐のある巨大な敵ではなく、巨大な敵は避けて通りたい恐怖の象徴。
探索は宝物の入手チャンスではなく、危険と死への最短距離。
そしてそれらの縛りが一気に解放される、ダンジョンをクリアした時の達成感。
それまでスピード感のあるACTゲームばかり遊んでたにも関わらず、不思議と強いやり応え、リトライ精神。そしてゲーム側からの挑戦を感じた。「クリアしてやろうじゃん!」 と。きっと当時のプレイヤーも皆そんな意気だったハズだ。
『デモンズ』の攻略は基本的に孤独だ。独りでダンジョンを攻略していかなきゃならない。だけど、だからこそ時たま見える「幻影」が良い仕事をしてた。「お。アイツもここで苦しんでんだな」って同情にも近い、自分への励ましになってて。
「ここからが本当のデモンズソウルだ」
「心が折れそうだ…」
「苦しいです。評価してください」
そんなメッセージが至る所にあるお陰で、独りで戦ってるわけじゃないんだ。って安心感があったね。ネットを介したマルチプレイが当たり前にある中で、あえて直線的な接触ではなく"ゆるい繋がり"に限定していた所が雰囲気を加速させてた。
自分が倒せない相手の向こうにあるメッセージを見付けては「この先に行けるんだ!」って確信があり、そんな目に見える口コミ要素も、とてつもなく新鮮で。攻略とは別に、まだ誰も置いていない場所にメッセージ置く快感もあった。新雪を踏む、まさにあの感覚とそっくり。
何度も死ぬ。当たり前のように死んでいく。でも、つい再挑戦したくなる手の届きそうな絶妙な難易度の謎解き。
お金や経験値も失っても、死ぬ前に体験した経験や記憶が攻略のカギになっていく。そんなゲーム外の要素があったからこそ魅力的になった。そう感じている。
ゲームの攻略には一切触れていないけれど、以上が俺の思う『デモンズソウル』の魅力。